マーケティングを行う上で必ず押さえておきたいのが、スイッチングコストの考え方です。この考え方を活用することで、新規ユーザーの獲得と既存ユーザーの流出防止効果が得られるようになります。
今回は、スイッチングコストの内容とそれを活かしたマーケティング施策について解説していきます。
スイッチングコストとは
スイッチングコストとは、今使用している商品の代替品を購入するときに必要となるあらゆるコストのことを指します。
代替品とは、その商品やサービスと置き換えることができる別の商品やサービスのことです。たとえば紙媒体の書籍の代替品としては電子書籍、デジタルカメラの代替品としてはスマートフォンなどが挙げられます。
スイッチングコストとして着目すべきなのは、「金銭的コスト」だけではありません。代替品を探して購入するために足を運ぶ「物理的コスト」や新しいサービスに切り替える面倒臭さなどの「心理的コスト」にも着目する必要があります。
「ユーザーにとっての価値>スイッチングコスト」が購買行動のカギ
新規のユーザーを獲得するためには、スイッチングコストよりもユーザーにとっての価値を高めることが重要です。マーケティングにおけるユーザーにとっての価値は、主に以下の2つです。
「ほかのバッグと機能性は変わらないのに高級ブランドのバッグを購入する」というように、商品を使うことによってユーザーが感じる心理的な満足度。
新規顧客を獲得したいときは、スイッチングコストの削減と併せて上記の価値を高めることが重要だとされています。
スイッチングコストを活かしたマーケティング施策
それでは、スイッチングコストを活かしてマーケティングをするときは、どのような施策を立てていけばいいのでしょうか。
ここからはスイッチングコストの細かい内容とそれを活かしたマーケティング施策について解説していきます。
①金銭的コスト
まずは、金銭的コストについて考えていきましょう。金銭的コストは、ほかの商品やサービスに切り替えるために必要となる金銭的負担のことを指します。商品の差額だけではなく、解約料や事務手数料などといった乗り換えに付随して発生するお金もここに含まれます。
ユーザーを囲い込む
既存のユーザー流出を防ぐためには、金銭的コストを上げて代替品への乗り換えを防ぐ必要があります。このときの施策としては、具体的に以下のようなものが考えられます。
サンクコストとは、投資やビジネスに対して今まで費やしてきた時間や費用などの取り返せない投資のことです。サービスに対して入会費や退会手数料などのサンクコストを発生させることで、「今までの投資がもったいないから、このまま利用し続けよう」と思わせることが可能となります。
また、長期利用者限定クーポンやポイントカードの導入により、「買い換えるよりも使い続けたほうがお得だ」と思わせることも効果的です。
購買を促進する
新規ユーザーの獲得のためには、金銭的コストを下げることが有効です。商品自体の価格を低価格にすることも有効ですが、「初回無料」や「乗り換え割引」などのキャンペーンを打ち出すことも非常におすすめです。
導入時の金銭的負担の削減だけではなく、「入会後のサポートが無料」「無料保証延長付き」など、付随するサービスに対するコストダウンも効果的が高い施策だと言えるでしょう。
②物理的コスト
物理的コストとは、ユーザーの時間や手間に関してかかるコストのことを指します。物理的コストには、以下の4つの種類があります。
一見お金がかかっていないため、購買行動に対しては大きな影響がないように思えます。しかし、商品を購入しに行く交通費や作業効率低下による費用対効果の減少など、物理的コストは間接的に金銭的コストとして換算できるコストです。
ユーザーを囲い込む
物理的コストを上げて既存ユーザーを囲い込むには、どんな方法があるでしょうか。たとえば独自の操作性をもたせて、代替品に切り替えるときの学習コストを上げると、物理的コストの引き上げにつながります。独自の操作性を持つAppleのiMacからWindowsに乗り換えにくいと感じている方が多いのは、この物理的コストが高いこと大きな要因です。
ただし、あまりにも物理的コストを引き上げるとユーザー満足度の低下につながってしまいます。ユーザーの利便性を考慮した上で、ちょうどいいバランスの物理コストを考案するようにしましょう。
購買を促進する
逆に新規ユーザーを獲得するために物理的コストを下げるためには、どんなことが考えられるでしょうか。たとえば、店舗に足を運んで商品を探す探索コストや移動コストを減らすためにインターネット通販で販売する、学習コストを下げるために互換性を持たせるなどの対策が考えられます。
先ほどご紹介したiMacを例に取ってみると、iMacはWindowsユーザーからの流入を促すために、一部ソフトに互換性を持たせるようにしています。
③心理的コスト
最後に考えるのが、心理的コストです。心理的コストは、代替品を購入するときに感じる面倒臭さやプレッシャーのことを指します。代替品へ買い換える手間に対する抵抗感だけではなく、長年愛用していた商品を手放す寂しさや、今までお世話になったスタッフとの関係性の消失も心理的コストに含まれます。
心理的コストはユーザーと商品の間で生まれるものですが、マーケティング施策によってある程度コントロールすることは可能です。
ユーザーを囲い込む
既存ユーザーを囲い込むときは、心理的コストを上げて「代替品へ買い換えることが惜しい」と思わせることがポイントです。具体的な対策としては、以下のものが挙げられます。
ここでポイントとなるのが、ユーザーとの関係性を強化して「顧客ロイヤルティ」を高めていくこと。そうすることでユーザーは、関係性が0から始まる代替品への乗り換えをためらうようになっていきます。
購買を促進する
心理コストを下げて新規ユーザーを獲得するには、購入検討段階から十分なサポートをしてあげることが重要です。
たとえばガラケーを使用しているユーザーは、スマホに買い換えることで「操作方法がわからなくなるかも」「今までのデータが消えてしまうかも」という不安を抱きやすい傾向にあります。そこで、全く知識のない人に対して丁寧に操作方法を説明したり、データ移行サービスを提案したりすると、ユーザーの抱える心理的コストはグッと下げられるようになるのです。
スイッチングコストが生み出す効果を活かしたWebマーケティングを!
スイッチングコストは、ユーザーが代替品へ買い換える際に要するさまざまなコストのことを指します。
スイッチングコストを上げることによる既存ユーザーの囲い込み、スイッチングコストを下げることによる新規ユーザーの獲得といったように、活用方法によって得られる効果は異なります。ぜひWebマーケティングの目的に合わせて、スイッチングコストを活用してみてくださいね。