ビジネスで生き残るためには、他社にはない自社だけの強みをアピールしていくことが重要です。とくに競争相手が多いWeb上でのマーケティングにおいては、他社とは一線を画す特徴がなければユーザーに選ばれることはできません。
競合他社と差別化を図るには、USP(ユニーク・セリング・プロポジション:Unique Selling Proposition)を理解することが非常に大切です。今回は、USPについて解説していきます。
USPとは
USPとは、「自社独自の売り」を意味するマーケティング用語です。USPは簡単に言うと、マーケティングのコンセプトを一言でまとめたもののことを指します。
世の中には同じものでも、複数の商品が存在しています。たとえばひげ剃りひとつをとってみても「フィリップス」や「パナソニック」などのたくさんのメーカーが存在していますよね。
それぞれのメーカーが選ばれ、生き残れているのは、それぞれなにか独自性を持っているからです。フィリップスなら「独自の回転シェーバーで肌への負担が少ない」、パナソニックなら「世界最速のリニアモーターが搭載されている」など、商品には必ず選ばれる理由があるのです。
USPを提示するメリット
USPを提示することで、単なる強みのアピールだけではなく「顧客に対して利益の約束」をすることができます。USPが明確で利益が約束された商品であれば、顧客は迷うことなく商品を選べるようになるでしょう。
たとえば、Web制作会社が「すぐに納品できます!」と宣伝しても、あまり魅力は伝わりません。一方で、「1週間以内に納品できなければ代金は半額です!」と宣伝すると、他社にはない強みに高められます。
他社が実現可能なことでも、具体的な数字を用いて強く約束することで、競争優位を築くことは十分に可能です。これが、USPを提示するメリットなのです。
USPの見つけ方
「自社にはアピールできる強みなんてない」と思われるかもしれませんが、ひとつでも商品が売れていれば、その商品が選ばれる理由は存在しているということになります。USPを探す際は、以下のポイントに着目して自社のサービスや商品を整理してみましょう。
上記の中で少しでも秀でている要素がある場合、それがUSPになり得るかもしれません。その要素をこれからご紹介するUSPの基準に当てはめて考えていくことで、自社にしかないUSPを見つけられます。
①顧客に対して利益を提案できているか
顧客にアピールするときは宣伝文句を並べるだけではなく、「こうすることでこういった利益がありますよ」と提案することが大切です。
マーケティング戦略を打ち出すときにありがちなのが、「サービス紹介」と「強み」と混同してしまうこと。たとえば、Web制作をするときに「SEOに強いサイトを作ります!」と広告を打ち出しても、サービスの紹介でしかなく顧客への提案にはなっていません。
そうではなく、「合格率7%の試験を突破したライターだけを使った、成約率の高いコンテンツ制作ができます」と広告を打ち出すことで、独自の強みやどんな利益が得られるのかを具体的にイメージできます。
②その提案は独自のものであるか
USPは、競合が同じ提案をできない、もしくはしないものである必要があります。他社と同じサービスを打ち出してもなんの強みにもならず、多くのサービスの中から選んでもらうことは不可能です。
たとえば店舗を増やしつつある1000円カット専門店は、従来の美容室や理髪店の充実したサービスをやめることで、独自性を発揮してきました。
このように、競合他社とは被らない独自性のある提案でなければ、効果的なUSPにはなり得ません。
③その提案は多くの人を動かす力があるか
強みを見つけても、実際に人を動かす提案でなければ意味がありません。とはいえ、すべての顧客のニーズを満たす提案をする必要はなく、狭い市場の中で専門性を活かすことがUSPの本質になります。
「介護に特化したWeb制作が可能」など、顧客が抱えている問題に特化した提案ができれば、狭い市場の中でも多くの人を動かす力を持つことは可能です。
市場や顧客のニーズを掴むには、「3C分析」や「STP分析」、「SWOT分析」などのマーケティングフレームワークを活用することをおすすめします。ここから自社の強みや競合の穴を見つけられるケースも非常に多いです。
USPの具体例
ここからは、USPの具体例についてご紹介していきます。自社のUSPを見つけるヒントを探してみてくださいね。
Apple
「1,000 songs in your pocket(ポケットに1,000曲のミュージックライブラリを)」
これは、2001年にiPodが発売されたときに打ち出されたUSPです。当時、これだけ小型・軽量、スタイリッシュなデザインで1,000曲も入るミュージックプレイヤーはほかにはありませんでした。
一般的な企業であれば「超小型・軽量」と表示するところを、「ポケットに1,000曲」と表現したのが、Appleの独自性です。使用シーンをイメージしやすく、顧客の心を掴むことができました。
ライザップ
「結果にコミットする」
ライザップは上記をUSPとして打ち出し、目標を達成できなければ料金全額返金などのサービスを提供しています。
ダイエットのためにジムに入会しても続かず、お金を払っても成果が得られないことに悩む顧客はたくさんいました。このニーズを汲み取ったのが、ライザップなのです。
そこでライザップは「必ず成果が出る」ことを約束し、従来のジムとは大きく差別化を図ったのです。
街のフレンチレストラン
イメージしやすいように、もっと身近な例として街のフレンチレストランを取り上げてみましょう。現在フレンチレストランは日本各地にあり、差別化を図ることが難しい状態です。そこで、以下のUSPを打ち出すことにしました。
「今すぐ真似できる高級フレンチ」
平日やディナータイムはフレンチレストランとして営業し、昼間の時間帯は主婦に対して店内メニューの料理教室を開催します。また、レシピをお店でフリーペーパーとして配り、自宅でも真似できるようにしました。
こうすることで「高級フレンチ」と「自宅でも真似できる」というギャップが印象に残り、話題性を生むことができます。季節のメニューを充実させることで顧客を飽きさせず、レストランと料理教室の継続的な集客を狙っていくことも可能です。
USPを活用して差別化して、選ばれるサービス提供を
USPはほかにはない自社だけの強みを表すものです。強い個性やメッセージ性を込め、顧客の興味を引く独自のUSPを提案していきましょう。3C分析やSTP分析、SWOT分析などを用いると、スムーズにUSPが見つかるかもしれません。
どうしてもUSPが見つからなければ、サービスを利用してくれた顧客の声を聞いてみることもおすすめです。自社では気づけなかった意外なポイントが、選ばれる要因になっていることもあります。