今の業務ソフトより月額料金が安いものを見つけると、乗り換えを考えたくなります。料金は大切な比較項目ですが、移した後に同じ仕事を進められるか、移すために誰が何をするかも一緒に見ておきたいところです。
厨房設備は、本体の値段だけでは入れ替えられない
例えば、飲食店の厨房設備を替えるなら、本体価格に加えて、搬入や工事、使い方の習得、営業を止める時間を考えます。業務ソフトも、利用料とは別に、切り替えるための作業が発生します。
顧客や商品の情報を移す、帳票を合わせる、社員が操作を覚える、取引先へ案内する。こうした乗り換えに伴う費用や手間を、スイッチングコストと呼びます。お金として請求されるものだけでなく、社内の作業時間も含めて見積もります。
いつもの仕事を一周できるか試す
機能表に「見積書」「請求書」があっても、自社の条件に合うとは限りません。例えば、見積もりを作り、条件を直し、受注後に請求し、入金を確認する。一連の流れを仮のデータで試します。
普段から発生する値引き、途中変更、取消し、担当交代も含めます。通常の一件だけ動いても、月末に必要な集計が作れなければ、別の転記作業が増えるかもしれません。
取引先へ渡す書類については、必要な項目や書式がそろうかを確かめます。社内では便利になっても、取引先が毎回読み替えを求められるなら、切り替え前の調整が必要です。
「データを出せる」と「そのまま移せる」は違う
現在のソフトから一覧を取り出せても、新しいソフトへ同じ形で入れられるとは限りません。項目名や日付の形式、顧客番号の扱いなどが違えば、整形や照合が必要になります。
顧客名簿だけでなく、過去の取引、添付ファイル、メモ、書類の履歴まで移せるかも確認します。すべて移さない場合は、過去の内容をどこで確認し、いつまで保持するかを決めます。
試験的に少量を移し、件数だけでなく内容を見比べます。元の資料を残したまま、文字化け、金額、日付、紐づく顧客が正しいかを確認してから範囲を広げると、問題の原因を追いやすくなります。
比較表に、社内で行う作業も足す
費用を比べる際には、次のように分けると抜けを見つけやすくなります。
- 毎月・毎年の利用料。人数や利用量が増えた場合の条件も確認する。
- 初期設定、データの整理と移行、帳票の調整にかかる費用や時間。
- 操作を覚える時間と、問い合わせへ対応する担当者の負担。
- 切り替え期間に旧ソフトと新ソフトを併用する費用。
- 利用をやめるときのデータ出力方法、利用条件、解約手続き。
条件は契約先やプランで異なります。候補の説明ページだけで分からない点は、具体的な作業を示して提供元へ確認します。
既存サービスへの乗り換え以外に、一部の作業用の道具を作る案もあるなら、既存サービスと独自の道具を選ぶときの考え方で、維持や引き継ぎの負担も比べられます。
切り替え日と、戻す条件を決めておく
新旧の両方へ入力する期間があるなら、どちらを正式な記録とするかを決めます。入力先が人によって違うと、重複や漏れの照合が難しくなります。
本番へ移る前に、動かなければ困る作業と、問題が出た際の対応先を決めます。戻す場合も、新しいソフトへ入力した内容をどう回収するかまで考えておきます。
乗り換える価値は、移行の手間があるだけで否定されるものではありません。今困っている仕事がどの程度楽になり、その状態を続けられるか。月額料金の比較に、切り替えの作業と日々の運用を足して判断します。
以前の導入費用が気になって判断が進まないときは、過去にかけたお金と、これから必要な費用を分ける考え方で選択肢を整理できます。